■針葉樹文庫について(南アルプス芦安山岳館・針葉樹文庫説明パネル) ■針葉樹文庫解題 ■針葉樹文庫解題 補足(如水会館にあった『針葉樹会報』合本について) |
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■針葉樹文庫について(南アルプス芦安山岳館・針葉樹文庫説明パネル) この「針葉樹文庫」は、旧制東京商科大学一橋山岳部(1922年創部)及びその後身である一橋大学一橋山岳部の出身者が集まる会、「針葉樹会」の物故会員2名の蔵書を中核にして成立した。すなわち、登山に学究心を抱き、山岳図書の蒐集にも注力した増山清太郎(1910~2000)と山本健一郎(1934~2007)の蔵書を中心に、他の針葉樹会員からの寄贈本も加えて集成した。 文庫がここ「南アルプス芦安山岳館」に置かれたのは、1930年代後半に一橋山岳部員の小谷部全助(1915~1945)らが、旧芦安村を拠点にして、北岳バットレス(第1尾根、第3尾根・第4尾根)の冬季初登攀を果たしたのが縁となった。一橋山岳部は、積雪期の鹿島槍ケ岳荒沢北稜・前穂高岳東壁・北穂高滝谷第4尾根など他の山域でも、当時の最先端を行く記録を残した。 戦後の一橋山岳部は、海外登山を視野に入れて、団体行動中心の訓練登山を志向した。実際に海外登山を企画、推進した針葉樹会は、岩壁壁登攀よりも未踏山域に重きをおく探検登山を目指した。1960年代には、アンデスおよびヒンズークシュへ遠征隊を派遣し、幾つかのの未踏峰を初登した。これらを含む戦前、戦後の一橋山岳部と針葉樹会の活動は、部誌「針葉樹」に詳しく報告されている。 備考:部報やOB会の名前に「針葉樹」を冠したのは、一橋山岳部が草創期にもっぱら秩父山塊の奥山を探索していたので、そのイメージを取ったものである。 なお、針葉樹文庫の図書目録は、S-6の棚にある「針葉樹文庫解題」に記載されている。同「解題」は、あわせて文庫成立の詳しい経緯、蔵書寄贈者である増山と山本の経歴にも言及しているので、ご覧いただきたい。 |
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▲説明パネルを持つ上原(昭和33年卒) | ▲針葉樹文庫棚に架けられた説明パネル | |
(5月16日 針葉樹文庫開設式にて) | ||
■ 針葉樹文庫解題 「針葉樹文庫解題」の眼目は、文庫の図書目録とそれに関連する凡例と人名索引ですが、文庫設立の経緯や背景、所蔵図書の構成、文庫としての正確や特色などを多岐にわたって解題した文章を巻頭に載せています。また、図書旧蔵者(増山清太郎・山本健一郎)の随想など8編の短文を附録として収めています。 |
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■針葉樹文庫解題 補足(如水会館にあった『針葉樹会報』合本について) 蛭川 隆夫(昭和39年卒) ****** 2018年12月28日投稿 ****** <図書幹事中村(雅)会員よりの前書き> 本稿は『針葉樹文庫解題』の「編集後記」(2009年5月16日、蛭川隆夫・記)の “各図書の寄贈者を記録に留めておきます。・・・同1-18~22は針葉樹会が、それぞれ寄贈しました。”を補足するものです。 今回、ある会員より如水会館の図書室にあった『針葉樹会報』合本が見当たらないことについて、図書幹事に問い合わせがあったことから、編集後記を執筆した蛭川会員が図書幹事に回答したものです。 当該の合本は、処分される寸前に救出され、「針葉樹文庫」の1部として南アルプス市(南アルプス芦安山岳館)に寄贈され、現在も同館、同文庫に収まっています。 『針葉樹会報』第100号(100号記念特集号、2004年1月21日発行)を編集する過程で、その時の会報幹事(有賀・井草・川名)は、戦後の会報のバックナンバー(復刊1~100号)を合本化すべきだと考えました(第100号の井草さんの「編集後記」を参照)。2006年度になって1セット4冊の合本が3セット完成し、如水会館図書室・日本山岳会・国立部室に献本されました(『針葉樹会報』第108号30~31ページ参照)。 それから数年後のある日(確たる記録がないが、2008年の秋か2009年の冬)、如水会館図書室の1セットが処分されそうになりました。当時、上原・倉知・竹中・蛭川の4名は針葉樹文庫設立に向けて活動していましたが、合本が処分されるようだという情報を上原さんが入手したのです。ただちに如水会事務局に行き確認したところ、献本は一定年数が経過したらその献本者に連絡することなく処分するというのがスタッフの話だったと記憶しています。 そこで、ゴミにする(?)なら引取りたい(返却してもらいたい)と申し出て、増山蔵書と山本蔵書を中核にして取りまとめつつあった針葉樹文庫に追加することにしました。この際に、文庫推進役の4名は、井草さんの編集後記を失念していて、上記3人の会報幹事に報告を怠り、後日、経緯を口頭で報告し文庫組込みの了解を得ました。 以上が経緯と現状ですが、焼却炉行きの運命だった貴重な合本が救出されたのは、常日頃から広角アンテナを張っている上原さんのおかげであり、また針葉樹文庫開設作業のまっ最中に救出劇がぶつかったのはタイミング的にラッキーでした。 最後に、針葉樹会報は今後とも定期的に合本化をして将来に向けてきちんと保存することが大事だと元図書幹事として訴えたいと思います。 |
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